裏切りの騎士と

不義の王妃

 

ランスロット、とその機体を名付けた時、彼の主は一瞬だけ面食らったように合間をあけて、その次の瞬間には破願した。

それは正しくロイドの意図をシュナイゼルが捕らえたことの証明である。

「それはまた素晴らしく隠喩的だね、ロイド」

画面に浮かび上がる機体の全身像の輪郭を手袋を取ったほっそりとした指先を伸ばしてなぞりながら満足気に笑う皇子殿下に彼の下僕は得意げに胸を張る。

「あっは!もうピッタリだろシュナイゼル!ランスロット!!裏切りの騎士!!」

途絶えさせる事無くどこか淫猥に騎士の姿を追う指を捕らえて口付け、跪くべき主君の名を呼び捨てて笑う男は正しくランスロット(裏切りの騎士)。

ならば口付けを受けるのはイゾルデ(不義の王妃)に他ならない。

咎める事無くむしろ積極的に遊ばせてロイドに応えながら、彼は微笑む。

「ああ、よく似合っている。でも、彼らのような結末はごめんだけれど」

「ぼくはそんなまぬけじゃあ〜り〜ま〜せ〜ん〜」

間延びして答えて、軽い濡れた音を立てさせて幾度も己に唇を落とす愛しい騎士は、確かに伝説の騎士のような愚かさはもたない。そして己もまたかの王妃のような愛らしさは持たない。

それは哀しむべき事かもしれないが、それもまた自分達なのだからしかたがない。

むしろそんな己達だからこそ、今がある。

いまだ不完全な機械の騎士を最後に一瞥して、シュナイゼルは今度こそ本当の騎士をその瞳に捉えて唇への口付けを強請るために腰を屈めた。